一人社長が自力で利益剰余金の資本組入れの増資登記手続きをやってみた
私が経営している会社も、3期目を終えました。
私の会社はアフィリエイトや投資が主な事業内容。しかも一人社長(会社には私しかいない)になりますので、利益がだんだんと積み重なってきました。
設立当初、自分の財布から会社にあまりお金を移したくなかったので、私の会社は資本金は30万円で設立したのですが、4期目を迎えて30万円というのはちょっとみっともない。
そこで今回、利益剰余金の資本組入れという仕組みで、資本金の増資を行いました。
利益剰余金の資本組入れによる増資とは?
まず、増資とは皆さん御存知の通り、簡単に言えば会社の純資産である資本金を増やすことですよね。
よく耳にする「公募増資」「第三者割当増資」などの増資の方法では、どこかからお金を集めてくる必要があります。有償増資と呼ばれます。
実は増資には「利益剰余金の資本組入れ」という方法があります。これは「今まで積み重ねてきた利益を、資本金にする」というものです。無償増資の一種です。
この図のように、今まで積み重ねてきた利益剰余金を、資本金にするだけです。
利益剰余金の資本組入れのメリット
お金を集めずに増資できる
有償増資と違い、利益剰余金の資本組み入れでは新しくお金を集めてくる必要がありません。
ただ登記をするだけで資本金を増やすことができます。かなり手軽です。
会社の信頼度が上がる
利益剰余金の資本組入れは、ただ単に利益を資本金に移すだけです。貸借対照表(バランスシート)の見栄えが良くなるわけではありません。
しかしながら、この世の中、会社の大きさを資本金で判断する人は大勢います。資本金30万円の会社と資本金1千万円の会社では、資本金1千万円の方が大きい会社に聞こえますよね。
会社の資本金が上がれば融資や採用なども有利に働きそうです。
利益剰余金の資本組入れの注意点
一方で、注意しておかなければならない点もあります。
合同会社はNG
利益剰余金の資本組入れですが、合同会社にはできない手続きのようです。株式会社ならOKです。
私の会社は先日、合同会社から株式会社に組織変更しましたので、この登記を行うことができました。
登録免許税はかかる
利益剰余金の資本組入れは、ただ利益剰余金を資本金に入れるだけの登記ですが、登録免許税がかかります。
会社の設立登記をした際に、資本金に応じて登録免許税を支払いましたよね。
- 資本金の0.7%の登録免許税
- ただし、株式会社は15万円、合同会社は6万円が最低でも必要
これと同じように、増資する金額の0.7%の登録免許税を収入印紙で支払います。ただし、3万円に満たない場合は3万円がかかります。
増加させる資本金の額の1,000円未満を切り捨てて、0.7%をかけます。
利益が出ていないといけない
利益剰余金の資本組入れは、当然ながら利益剰余金が出ていないといけません。
法人税を支払って利益を積み重ね、はじめて利益剰余金の資本組入れができます。
確定した利益のみ増資できる
というのはできません。利益剰余金の資本組入れは、確定した決算(定時株主総会決議で承認を受けた利益)の利益剰余金のみ組み入れられるようです。
期中にいくら儲かったとしても、その期が終わらないと増資できないのです・・。
増資しすぎると税金が増える
増資しすぎると、様々な税金が増えることにも注意です。
例えば法人住民税の均等割。資本金が1,000万円までなら7万円ですみますが、資本金が10,000,001円になると18万円に跳ね上がります。
また、資本金が10,000,000円になると、売上に関わらず、有無を言わさず消費税の課税事業者になります。
数人の企業なら、増資したとしても1千万円弱の資本金で十分なのではないでしょうか。
利益剰余金の資本組入れの登記
さて、実際に登記を行ってみましょう。必要なものはこちらの通り。
- 株式会社変更登記申請書
- その他利益剰余金の額が計上されていたことを証する書面
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 収入印紙を貼りつけた、収入印紙貼付台帳
- 法人の実印
株式会社変更登記申請書
メインとなる書面です。このような内容で提出しました。
「登記すべき事項」には、増資後の資本金を記載します。「登記すべき事項」はオンラインで提出しても良いのですが、面倒なので私は紙で提出しています。
「課税標準金額」は、増やす資本金の額の1,000円未満切り捨てです。これに0.7%をかけて「登録免許税」に記載します。
その他利益剰余金の額が計上されていたことを証する書面
長ったらしい名前ですが、要するに、
というのを証明する紙です。
その他利益剰余金の額に関する証明書
当社のその他利益剰余金の額 金12,345,678円
資本金に組み入れたその他利益剰余金の額 金8,990,000円
上記のとおり,減少に係るその他利益剰余金の額が計上されていたことに相違ないことを証明する。
令和3年4月5日
東京都東京区東京一丁目2番3号
株式会社ほにゃらら代表取締役 東 京一郎 印
株主総会議事録
利益剰余金の資本組入れには、株主総会の決議を必要とし、議事録の提出が必要です。
とはいえ私の会社は一人法人なので、1人で自作自演の株主総会を開催して議事録を作成します😅
臨時株主総会議事録
令和3年4月5日午前1時から、当会社本店において、臨時株主総会を開催した。当日の出席株主数ならびに株式数は下記のとおり。
株主の総数 1名
発行済株式の総数 300株
議決権を行使できる株主の数 1名
議決権を行使することができる株主の議決権の数 300個
出席株主数(委任状による者を含む) 1名 出席
株主の議決権の数 300個出席取締役 代表取締役 東 京一郎(議長 兼 議事録作成者)
定刻、代表取締役 東 京一郎 は議長席に着き、定款により議長たることを述べ、本総会の開会を告げ、本日の出席株主数およびその持株数、議決権数を前記のとおり報告し、定足数を満たしているので本総会は適法に成立した旨を述べ、直ちに議事に入った。
議案 その他利益剰余金の資本組入れに関する件
議長は、下記要領により当会社のその他利益剰余金の額の一部を減少して資本金の額を増加したい旨を述べ、その可否を議場に諮ったところ、満場一致をもって承認可決した。
1.減少するその他利益剰余金の額 金8,990,000円
2.増加する資本金の額 金8,990,000円
3.効力発生日 令和3年4月5日議長は、以上をもって本日の議事を終了した旨を述べ、午前1時30分閉会を宣した。上記決議を明確にするため、本議事録を作成し、議長及び出席取締役が次に記名押印する。
令和3年4月5日
東京都東京区東京一丁目2番3号
株式会社ほにゃらら 臨時株主総会 議長代表取締役 東 京一郎 印
株主リスト
平成28年10月から、「登記すべき事項につき株主総会の決議(種類株主総会の決議)を要する場合」には株主リストの提出も必要となりました。今回私も初めて知りました。
と言うわけでこの登記にも株主リストの提出が必要です。
「株主リスト」とGoogle検索すると法務局のWebサイトがヒットしますので、そのテンプレ通りに記載すればOKです。
以上をまとめて、印鑑を押して、収入印紙を貼りつけて法務局へGO😆
利益剰余金の資本組入れの登記が終わった後の手続き
数日待てば登記が完了しますよね。でも、その他にも手続きが必要です。
税務署
増資した場合には税務署に変更届の届け出が必要です。
そのほか都税事務所などにも行きましょう。
経営セーフティ共済
経営セーフティ共済を利用して節税している場合、こちらにも届け出が必要です。
なお念の為確認しましたが、私の敬愛するみずほ銀行様は、増資しても手続き不要でした。